3年1組の教室の前までやってくると、息苦しいほどに心臓が高鳴り始めた。先生は急に心配そうな顔になった。
「凛々子さん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
私は前を向いたまま、先生の顔を見ずに言った。
大きく息を吸い込み、吐き出しながら、震える足を前に踏み出す。
キーンコーンカーンコーン……
チャイムの音が鼓膜を打った。
声が出そうになって、咄嗟に息を止めた。壁掛け時計から降り注ぐ光に包まれ、急速に時間が巻き戻されていくのを感じた。ぐらりと頭が強く揺れる。
めまいがおさまると、濃い霧が晴れるようにすうーっと視界が開けていった。
「えっ……?」
開けた視界の先には、誰もいなかった。
教室の端から端まで見渡す。やっぱり誰もいない。
もしかしてタイムリープしてない……?