十二年もブランクはあったけれど、手が作り方を覚えているのか、思ったよりもうまくできていた。あとは味だけ。
十分に冷ましてから、パンダのクッキーを手に取り、耳の分をひとかじりしてみた。
サクッと気持ちのいい音がし、次いで優しいバターの味が口の中に広がった。
「あぁ、美味しい……」
思わずつぶやいてしまうくらい、美味しかった。死んでいた味覚が、生き返ってくるのを感じた。
唐突に、自分以外の誰かにも食べてほしいと思った。真っ先に浮かんだのは、両親と入院中のおばあちゃん、それから松下先生の顔だった。
リビングの時計を見た。
15時00分。
今からこのクッキーを差し入れがてら両親の元へ届けて、そのあとすぐにおばあちゃんのところへお見舞いに行こう。先生には綺麗にラッピングしたものを明日渡そう。
私は作ったクッキーをタッパーに入れ、急いでキッチンを片付けて家を出た。