口の中いっぱいに広がるバターの風味と、ホロッと崩れるような食感に、喉元までせり上がってくるような懐かしさを覚えた。
みんなとの楽しかった日々が。
毎日あたりまえのように一緒に過ごし、笑いの絶えなかったあの日々が。
舌を通して鮮明に蘇ってくる。
——ぽろっ。
そのとき、自分の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「……っく……ひっく」
「ちょっ、リリ? 急にどうした?」
しゃっくりを上げて泣き始めた私に、みんなが駆け寄ってきた。
「凛々子ちゃん、大丈夫?」
「どうしたの?」
「……美味しい」
「えっ?」
「美味しいよぉっ!」
自分で作ったお菓子ながら、涙が出るほど美味しかった。
みんなの笑い声が一斉に弾けた。
「あははっ。凛々子、あのクッキーにお酒でも入れたの?」
「自分で作ったクッキーの味に感動して泣くなんて、絶対酔っ払ってるだろ」
沙恵ちゃんと和也くんが私の背中を叩きながら笑った。私は制服の袖でごしごしと目元をこすった。