「愛梨ぃ、今日の帰り一緒にカラオケ行かない?」


 放課後、帰り支度をしていた私はりっちゃんから声をかけられた。

 私は両手を合わせ、申し訳ないと思いながら頭を下げる。


「ごめん、今日はバイトなんだー」

「えー、またバイトなのぉ?」


 その会話を聞いていた優歌が、つまらなさそうに口を尖らせる。


「愛梨バイトいれすぎじゃない? 最近全然遊べてないじゃん」

「そうそう。ほぼ毎日行ってるじゃん。何か欲しい物でもあるの?」


 りっちゃんと優歌は仲の良い友達だ。学校にいる時は、たいてい三人で行動している。放課後も二人の部活がない時は、一緒に遊びたいのだけれど……。

 困ったな、と思いながら頬をかく。


「うーん、特に何か欲しいってわけでもないんだけど、楽しくてやってるから」


 会話を切り上げて帰ろうとしたが、二人は仕事の内容に興味を示したようだ。


「そういえば愛梨のバイト先の話って、あんまり聞いたことなかったよね」


 私は頭の中で声を大にして叫ぶ。

 だって話せるわけないもん!


「何のお店?」

「えっと……」