館に戻ると、門のところで待ち構えていたラナが駆け寄ってきた。
「お嬢様! レナード様が!」
「外で会ったわ。彼はもう戻って来ているでしょう?」
「は、はい。応接間にいます。コンラードさんが相手をしていますけど……」
ラナは不快そうに眉をひそめる。
「何かあったの?」
「宿の部屋を見せろと強く言われてしまって。満室なので無理だとお答えしたら機嫌を損ねてしまいました」
「はあ……ごめんね、嫌な思いをさせてしまったわ。もうレナードの事は放っておいていいわ。部屋の事は私から断っておくから」
「はい……あのレナード様はどうしてこちらにいらっしゃったのででしょうか? スタッフも皆気にしています」
「私に話があると言っていたわ。詳しくはレナードとの話し合いが終わったら説明するから。ラナはレナードの従者が温泉で変な事をしないか気をつけておいて。お客様に迷惑がかかりそうなら、護衛のふたりに言って追い出してしまってもいいわ」
ラナに念を押すと、ライと共に応接間へ向かう。
軽くノックをしてから部屋の扉を開くと、中ではコンラードが険しい顔をしながらレナードと向き合っているところだった。
けれど、 私の入室に気付くとふっと表情を緩ませる。
「おかえりなさいませ」
「コンラードただいま。レナード殿、お待たせいたしました」
そう言いながら、空いている椅子に腰掛ける。
ライは私の少し後ろに。
すぐに、レナードが話しかけて来た。
「エリカ、君の侍女とこちらの家令にも言ったのだが、反応が悪いので君に頼む。宿泊施設と浴場の見学がしたいんだ。戻って来て早々に悪いが案内をしてくれないか?」
コンラードの渋い顔の理由が分かった。
レナードは断られてもしつこく要求を突きつけていたのだろう。
突然来て見学させろだなんて、相手の都合を無視しているし、非常識だと思いながらも、当主代行のレナードに、使用人の立場では強く意見する事は出来なくて、困っていたのだと思う。
そんな様子に私は苛立ちながら、レナードに告げる。
「今は毎日満室でどの部屋にお客様もがいるから見学は無理です。どうしても見たいのならお客様の入れ替わりの時間まで待って貰うしかないわ。温泉の方は、深夜になればお客様の入浴時間が終わるから、今夜の内に案内出来るけれど、どちらにしても今すぐは無理よ」
「当主代行の俺が一般人に気を遣って、後回しにになるのか?」
レナードは自分が後回しにされるのが信じられないようだった。
だけど私は遠慮なく頷く。
「そうよ。ここではお客様が優先だもの」
文句があるなら言ってみろ、なんて強気な態度で言うと、レナードは黙り込んだ。
「お嬢様! レナード様が!」
「外で会ったわ。彼はもう戻って来ているでしょう?」
「は、はい。応接間にいます。コンラードさんが相手をしていますけど……」
ラナは不快そうに眉をひそめる。
「何かあったの?」
「宿の部屋を見せろと強く言われてしまって。満室なので無理だとお答えしたら機嫌を損ねてしまいました」
「はあ……ごめんね、嫌な思いをさせてしまったわ。もうレナードの事は放っておいていいわ。部屋の事は私から断っておくから」
「はい……あのレナード様はどうしてこちらにいらっしゃったのででしょうか? スタッフも皆気にしています」
「私に話があると言っていたわ。詳しくはレナードとの話し合いが終わったら説明するから。ラナはレナードの従者が温泉で変な事をしないか気をつけておいて。お客様に迷惑がかかりそうなら、護衛のふたりに言って追い出してしまってもいいわ」
ラナに念を押すと、ライと共に応接間へ向かう。
軽くノックをしてから部屋の扉を開くと、中ではコンラードが険しい顔をしながらレナードと向き合っているところだった。
けれど、 私の入室に気付くとふっと表情を緩ませる。
「おかえりなさいませ」
「コンラードただいま。レナード殿、お待たせいたしました」
そう言いながら、空いている椅子に腰掛ける。
ライは私の少し後ろに。
すぐに、レナードが話しかけて来た。
「エリカ、君の侍女とこちらの家令にも言ったのだが、反応が悪いので君に頼む。宿泊施設と浴場の見学がしたいんだ。戻って来て早々に悪いが案内をしてくれないか?」
コンラードの渋い顔の理由が分かった。
レナードは断られてもしつこく要求を突きつけていたのだろう。
突然来て見学させろだなんて、相手の都合を無視しているし、非常識だと思いながらも、当主代行のレナードに、使用人の立場では強く意見する事は出来なくて、困っていたのだと思う。
そんな様子に私は苛立ちながら、レナードに告げる。
「今は毎日満室でどの部屋にお客様もがいるから見学は無理です。どうしても見たいのならお客様の入れ替わりの時間まで待って貰うしかないわ。温泉の方は、深夜になればお客様の入浴時間が終わるから、今夜の内に案内出来るけれど、どちらにしても今すぐは無理よ」
「当主代行の俺が一般人に気を遣って、後回しにになるのか?」
レナードは自分が後回しにされるのが信じられないようだった。
だけど私は遠慮なく頷く。
「そうよ。ここではお客様が優先だもの」
文句があるなら言ってみろ、なんて強気な態度で言うと、レナードは黙り込んだ。