「私の幸福?」

そんな事を聞かれても、改めて考えた事はないから困ってしまう。

だけど……。

「……私の望みは、自分の仕事を持って自立すること。その仕事が好きなことで、気の合う仲間と一緒に働けたら最高だわ」

「まさに、今の状況だな」

「言われてみれば……でもこれで満足している訳じゃなくて、もっと立派な温泉を作りたいわ」

「そうか、でもお金が欲しい訳じゃないんだろう?」

「お金はある程度あればいいと思ってる。それよりも、一生懸命になれる仕事が必要なの」

「必要か……それはどうして?」

ライに問われ、私は目を瞬いた。

「どうしてって……だって仕事にやりがいが無いとつまらないし」

それに余計な事を考えてしまうから。


言葉を濁す私に、ライが更に問いかけて来る。

「エリカは今の生活で本当に幸せか? 確かに仕事は順調だ。けど、宝石もドレスも全て売り払って、貴族として社交界に戻る道を自ら捨てて、それで本当にいいのか?」

「……ライは私が結婚しないのを気にしているの? 前もそんな事言ってたよね」

「気になるに決まってるだろ? エリカには幸せになって欲しいから」

ライは真面目な目をしてはっきり言う。

「……世間的には良い条件の男性に嫁ぐのが幸せと言われているのは分かっているわ。でも、私はそうは思わない。社交界に出て前の婚約者との事を噂されながら、新しい相手を探して、その人と婚約出来たとしてまた裏切られたらどうするの? その時、私は今よりと年を取っていて、この世界の価値観からすれば完全な行き遅れ。次の相手なんている訳ないし、修道院へ行けと周りから言われるわ」