「ますますって、何か帰りたくない理由があるの?」

モリスは疲れたような溜息を吐く。

「先日よりレナード様が旦那様の補佐をされているのですが、折り合いが悪く……頼みのエミリー様は子爵家の運営について全く知識が無いので、間に入ることが出来ませんので、なかなかに険悪な雰囲気が漂ってます」

「……なんか、想像が出来るわ」

お父様は優しくて良い人なのだけど、当主としては駄目。
そんなところがレナードの目に余るのだろう。
そしてお父様はレナードの厳しさに反発を覚えているのだと思う。私の事があって初めから溝がありあっという間に悪化したのかも知れない。

エミリーに仲裁は無理だろう。だってあの子は昔から難しい事が嫌いで、争い事からは逃げる面があるから。

クレッグ子爵家……大丈夫なのだろうか。

レナードの事はどうでもいいけど、お父様の事は心配だ。

「モリス……お父様の事を頼んだわ。その内良くなると思うから」

クレッグ子爵家としては、レナードが経営管理した方が上手く行くと思う。

だからと言って、お父様を蔑ろにしないで欲しい。離れているから心配だ。

エミリーが役に立たないなら、モリスに頑張って貰うしかない。

今夜はモリスにとびきり美味しいものをご馳走しようと決意した。