三日後。

クレッグ子爵本家の家人モリスは、昼過ぎに到着した。

彼はクレッグ子爵家に仕えて二十年。過去お母様の付き添いでミント村に来たことがあるそうだ。

その彼は、村の様子を見てとても驚いた様子だった。

温泉にも興味を持ったように見えたので、まずは旅の疲れを癒すようにと、男湯に案内した。



半刻後。
モリスはすっかりリラックスした様子で、領主館に戻ってきた。

「いやあ、温泉とやらは最高ですな。疲れもどこかへ行ってしまいました」

「それは良かったわ。これは湯上りに出している果実水よ、飲んで見て」

「おお、ありがたい。ちょうど喉が渇いていたので」

モリスはごくごくと喉を鳴らす。
凄い勢いだ。お風呂上がりの一杯は美味しいよね。

彼は飲み終わると落ち着いて来たのか、私を見て不思議そうな顔をした。

「エリカお嬢様、随分と感じが変わりましたな」

「こちらに住んで、髪と肌の調子が良くなったのよ」

「そのようですな。なんだかキラキラして見えます」

私は満足して頷いた。
外見に全く拘らないタイプのモリスが言うくらいなのだから、温泉の効果はてきめんなんだろう。

「ありがとう。ところでそろそろ王都の様子を教えてくれない?」

「あっ、そうですな。と言ってもエリカお嬢様がいた頃から大きな変化はありません。物価の変動もなく、そんな中、先程お渡しした宝石類の売上金は良い方でした」

「そうなのね、上手く交渉してくれて助かったわ」

「いえいえ家人として当然のこと。そう言えば商人との交渉でサウラン辺境伯領の噂を聞きました。ここからサウランは近いですし報告しましょうか?」

「そうね、話してくれる?」