◇◇◇

私やラナをはじめとした宿屋のスタッフは、お客様が利用した後の深夜に温泉に入っている。

みんなでワイワイと入るのはなかなか楽しいく、会話も弾む。
最初は遠慮していたミント村のスタッフも、今ではすっかり親しくなった。

今も他愛ない話をして笑っていたのだけれど、ふと感じるものがあり、空を見上げた。

「お嬢様、どうしたんですか?」

私の様子に気付いたラナが聞いてくる。

「明日、雨が降りそうだわ」

「えっ? 本当ですか? こんなに天気がいいのに」

ラナ以外のスタッフは信じられない様子。

「お嬢様の天気予報は当たるんですよ。久しぶりの雨ですね」

「そうですね。皆は喜びそうです。でも困りましたね、雨が降ったら温泉に入れません。お客さん達がっかりするでしょうね」

スタッフの言葉に皆も頷く。

我がミント村の温泉宿の欠点。
それは、屋根がない事。

着替えなどが出来る、目隠しを兼ねた建物はは建てたけれど、資金的にも時間的にも屋根まで付ける余裕が無かったのだ。

だけど、この問題点を解決する為に、準備は進めていた。

私は得意げに皆に宣言する。

「明日の雨には間に合わないけど、近いうちに屋根の工事に入ります」

「えっ? 本当ですか? 」

「ええ、多分来週から準備に入れるわ。材料を手配したり忙しくなりそう。みんなも協力お願いね」

「はい! ますます良い温泉になりそうで楽しみです」

みんなやる気を持って働いてくれているので、助かる。 私も屋根の工事が楽しみだ。

ついでに、新しい井戸と、はじめに見つけた天然の温泉の整備をする予定。

以前から売りに出していた私の装飾品が、ようやく現金に変わったのだ。

両親からのプレゼントなど大切なもの以外は全て売りに出してしまった。
その中には、レナードから義理で贈られた宝石などもあり、これがかなりの高値で売れたので、ラッキーだった。

さすがは侯爵家。形式的な婚約者にも惜しみなく高価なものをくれてありがとう。
この件については、レナードに感謝だ。

換金については、トレヴィア王都のクレッグ子爵家の信頼出来る家人に頼んであった。
その家人から、売上金を持って来ると連絡が有ったのだ。

お金も手に入るし、王都の様子も聞けるし、明日が楽しみだ。