「俺が好きなのは綺麗な黒髪」

「黒髪? へえ……」

黒髪はそんな珍しいものではない。結構な確率で該当する人がいそうだ。私もそうだし。

「長くて真っ直ぐな髪がいいな」

「なるほど、男の人って長い髪が好きよね」

「瞳は緑がいい」

「ふーん……緑と言ってもいろいろあるけど、案外普通なのね」

ライの様な珍しい紫色とか、カミラさんのようなキラキラした湖面のようなアイスブルーとかもうちょっと、希少な色が出ると思ったのだけど。

「普通か? 直ぐに触れたくなるくらい綺麗なんだけどな?」

ライはふっと笑っていう。

「え? 誰か具体的に好みの人がいるの? 実際触ったりしてるの?」

「触ってない、怒られたら怖いし」

「……ライが相手なら怒らないんじゃない?」

だってライはイケメンだもの。ミント村の独身女性達の心をがっつり掴んでいるし。

逆に喜ぶんじゃないだろうか。そんな事を思っていると、ライはふわりと手を動かし、私の髪の先っぽを掴んで来た。

「……何してるの?」

「許可が降りたから触ってみた」

何て言いながらニヤリと笑う。

どういう意味? 許可が降りたって……あれ? そう言えば黒髪、緑瞳って私の事じゃない?

一瞬後、からかわれていたのだと気付いた私は、ぷくっと頰を膨らませた。

「もう! 真面目に聞いてたのに、ふざけないでよ!」

「別にふざけてないけど? エリカの髪サラサラだな」

そう言いながら私の髪を指先でクルクルと弄ぶ。

「どう考えてもふざけてるじゃない!」

真面目に聞いて損をした。

私はガタンと椅子を鳴らして立ち上がる。同時にライの手の中に有った髪の毛がするりと逃げる。

部屋を出るとライも一緒に付いて来た。

「来なくていいけど?」

素っ気なく言っても「護衛だから」と平然と付いてくる。

自然と並んで歩いていると、ライが何気なく言った。