その後、ライとカミラさんがふたりでいる場面を見かける事は無かった。

ライは外出している時以外は私の近くに居ることが多かった。
空いてる時間は好きにしていていいと言っているのだけれど、護衛としては側にいた方が楽だそうで、いつも視界に入る範囲にいる。

カミラさんと過ごす時間がなくても、ライは何とも思ってなさそうだ。

本当に私の勘違いだったのかも。


そんな風に感じ始めていた頃、スタッフの休憩時間中に、ライの恋人の話題になった。

「ライは故郷に恋人がいたりするの?」

言い出したのは、ラナ。
だけど、他のスタッフも興味津々といった様子だから、みんなの気になっている事なのだろう。

「え? ……なんだよ、いきなり」


予想外の質問だったのか、ライはかなり戸惑っている。

答えたくないと顔に書いてある。

けれど、皆の期待を背負ったラナは、更に追求を強めていく。

「前から気になってたの。それでいるんですか? 誰か待たせているの?」

皆の期待の篭った視線に気付いたのか、ライは溜息混じりに返事をした。

「誰も待っていない」
「うそ、本当に?」

ラナ達は意外そうな声をあげる。

私は口を閉ざしているけれど、会話はしっかり聞いている状況。
スタッフの手前、冷静さを装っているけれど、かなり関心がある。

「そんな事で嘘をついても仕方ないだろ?」

ライはこの話題を早々に切り上げたいようで、食事のスピードを上げている。終わり次第どこかに立ち去るつもりだろう。

だけどそんな事はラナにはお見通しのようで、逃さないと言わんばかりに、次の質問をしかける。

「どうして相手がいないの? ライのその見かけなら女の子の方から近付いて来るでしょう?」

それは私も同意だ。
超絶イケメンのライなら、だいたいの女性は選り取り見取り。

同じような美形のカミラさんは手強そうだったけれど。

「……そういう事が無かったとは言わないけど、決まった相手は居なかった」

ライがめんどくさそうに、返事をする。

「という事は、不特定多数と遊んでたの?」

ここに来て急にライの遊び人疑惑が浮上して来た。

ラナの当然とも思える疑問に、ライは今度こそ黙り込んでしまった。

どうやら、はっきり否定出来ない様子。
という事はラナの指摘は大方当たっている?

そんな事を考えながらも、そろそろライを救出してあげる事にした。

女性に囲まれてあれこれ恋愛話をされても、居心地が悪いだろう。
すごく困った顔をしているのを見ると、流石に気の毒になってきた。


「みんな、部屋の掃除は終わった? 夕方になったら勧誘に応えてくれたお客様が来るかもしれないわ」

私の言葉に、皆は慌てた様子で椅子から立ち上がる。


「そうでした、急いで片付けないと」


ラナ達はバタバタと休憩所を出て行く。