カミラさんを見た、ライの反応は意外の一言だった。

彼はいつも飄々としている。
何でも余裕残しでそつなくこなす。
トラブルが有っても大して動じない。

でも、美女には弱かったということか。

ライ自身が超絶美形なので、美への耐性は高いと思っていたけれど、どうやら違っていたようだ。

対してカミラさんは、イケメンに慣れているようで、ライを見ても美女らしい上品な微笑みを浮かべるだけだった。

側から見ても二人の温度差を感じてしまう。

依然としてカミラさんを見つめるライに、私は近付き耳打ちした。

「ライ、しっかりして。彼女はお客様よ」

私の声に、ライは夢から覚めたような表情で視線を向けてくる。

「客?」

「そう。初めてのお客様。だから変な事しないでよ?」

ライに釘を刺しつつ、ラナに合図してカミラさんを、食事場所へ案内してもらう。

カミラさんの美しく凛とした後ろ姿が遠ざかって行くのを、ライはいつまでも見つめていた。


彼女の姿が完全に見えなくなると、ライはようやく私に目を向けた。

「あいつはどうしてここに?」
「あいつってカミラさんのこと?」

なんだかいきなり距離感が近い口ぶりじゃない?

「呼び込みで来てくれたのよ。サウランから王都へ向かう途中だそうよ。女性の身で野宿は不安だったから丁度良かったって」

「女性……で、ひとりなのか?」

「そうみたい。危険よね、あれ程の美女だと人一倍目立つだろうし」

ライは険しい表情だ。
カミラさんの事が心配なのだろうか。

「ねえ……もしかして一目惚れ?」

間違いないだろうも思いながらも、聞いてみる。
ちょっとからかいたくなる気持ちも有った。

「は? そんな訳あるか! なんでおれがあいつに?」

ライは大げさに否定してくる。
そのムキになる態度が肯定を示しているのに、素直じゃないな。

「カミラさんはすごい美人だものね。私も最初見とれてしまったからライの気持ちは分かるわ」

ライは男だから見惚れるに加え、いろんな気持ちがあるだろう。

「違うって言ってるだろ?」

「彼女はお客様だし無理強いはしないでよ?」

「おい、エリカ?」

完全にバレバレなのに、しぶとく否定してくるライを置いて、私はコンラードのところに向かうことにした。




カミラさんは温泉と料理をたいそう気に入ってくれたらしく、次の日も泊まってから王都へ向けて出発した。

帰りも立ち寄ってくれるらしい。