護衛のふたりに街道まで呼び込みに行って貰い、お客様を迎える準備をする。

午前中は誰も来なかった。
まあ、これは予想通りだから問題ない。
待つ間に接客の練習をしたり、不備がないか確認したりして時間を潰す。

そうやって少し間延びした空気感が漂い始めた頃、護衛のひとりから勧誘に成功したとの知らせが入った。

張り切って迎える準備をしていると、お客様らしき人影が近付いて来た。

「いらっしゃいませ、ようこそおいでくださいました」

笑顔で出迎えた私とラナは、そのお客様の顔を見た瞬間、つい固まってしまった。

だって、ものすごい美女がやって来たのだ。

華やかな蜂蜜色の髪はサラサラと肩を流れ、完璧な形の大きな瞳は、透き通った湖のような水色で何かを訴えるかのように潤んでいる。
小さいのにぽってりとした唇は、赤く色づき色っぽい。

ごく普通の旅衣装姿だと言うのに、後光が差しているかのように輝いて見える。

こんな綺麗な女の人を見たのは初めてだ。
可愛いと評判だったエミリーよりも遥かに美人。

ライも相当な美形だけど、気取らない言動で緩和されている面がある。

だけど、彼女に粗野さは微塵もない。
そのせいか、ただそこに佇んでいるだけなのに、美しさに目を奪われる。

呆然とする私達に、美女は少し困ったような微笑みを浮かべて言う。

「あの……こちらに宿泊出来ると聞いたのですが」

私はようやく我に返り、慌てて接客をスタートする。

「は、はい。お越し頂きありがとうございます。お手数なのですがまずは受付をお願い出来ないでしょうか。終わり次第お部屋にご案内致します」

「ええ、よろしくお願いします」

美女が答えると、ラナの先導で建物に向かう。

受付で確認したところ彼女の名前は、カミラ・プロイセ。歳は二十二歳とのこと。

サウラン辺境伯領から、王都へ向かう途中との事だった。

野宿を覚悟していたところうちの護衛と会い、宿の話を聞いたらしい。