私は驚き言葉を失った。
ミント村に来て十日以上経ち、何度も村をウロウロと歩き回ったと言うのに、少しも気付かなかったのだ。

ミント村は平和で、住む人等も穏やかで、温泉で会ったランカ村の男達とは全く違うから。

「申し訳ありません、驚かせてしまいましたね」

私の動揺に気付いたのか、コンラードが気遣うように言う。

「いいえ、話してくれて良かった。もっと早く教えてもらいたかったくらい」

察する事が出来なかった私も領主家の一員として問題だけれど、コンラードもはっきり言ってくれたら良かったのに。

「お嬢様にはもう少し落ち着いてから話すつもりでした。旦那様からもまずは今回の件の傷を癒すようにとのご命令でしたので」

どこか気まずそうなコンラードの顔。私は納得して頷いた。

つまりは、妹に婚約者を奪われ、かつ時期子爵夫人の地位を失った私を心配して、余計な心労をかけないようにしてくれていたと言うことか。

お父様が心配してくれるのはありがたいけれど、こうも過保護にされるのも困ってしまう。

私は小さく溜息を吐いてから、無理矢理笑って言った。

「私ならもう大丈夫よ、傷ついてもいないから。問題点を教えて?」