館に着くと、ラナが慌てた様子で駆け寄って来た。

「お嬢様! 怪我でもされたのですか?」

大人しくライに背負われている様子を見て、心配したようだ。

「怪我はしてないから大丈夫。ちょっと疲れちゃっただけよ、それよりコンラードは中にいる?」

「あっ、はい。執務室にいらっしゃいます」

「分かったわ」

私がそう言い終えると直ぐに、ライは執務室に足をすすめる。
気がきく護衛で本当に助かる。

コンラードは書類の整理をしていたけれど、私の姿を見て作業の手を止めた。

「お嬢様、それは何の真似でしょう?」

ラナとは違い一目見て私が怪我などはしていはいと察した様子。
心配と言うより“仕方ないな”とでも言いたそうな視線を向けて来る。

「コンラードに話があるの」

ライにソファーに座らせて貰いながら言う。
その間に後を付いて来たラナがお茶の支度をしてくれた。

コンラードが私の前に、ライとラナが執務室の端に置いて有った背もたれの無い椅子を持ってきて座る。

みんなが落ち着くのを確認すると、私は早速切り出した。

「さっき南の方向にあるお湯が湧き出る岩場に行ったの。そこでランカ村の人達に会ったのだけど、様子がおかしかったの。やけに攻撃的で私が領主の娘と知っても態度を改めなかったわ。むしろ恨まれているような気もした。それに村の水場が使えないと言っていたの」

「ランカ村の者と会ったのですか? 」

コンラードの顔色が変わる。