「温室での会話聞いたわ。レナードが私の婚約者なのは当然知っているわよね。どういうつもりなの?」

厳しく言い放つとエミリーは顔を歪め、次の瞬間にはポロポロと大粒の涙を零し始めた。

「ご、ごめんなさい……レナード様がお姉様の婚約者なのは分かっていたけど、私、好きになってしまって……」

エミリーは泣き顔も可愛らしい。頼りなくて、大体の人は守ってあげたいと思うだろう。

けれど私が感じるのは強烈なデジャブ。
この状況に覚えがあった。

エミリーはきっと儚く嘆きながら言うのだ。

「お姉様を傷付けるつもりは無かったの」

「……やっぱりね」

予想通りの言葉に私はがっかりとして呟いた。

前世の記憶と怖いほどそっくりだった。まるで起きた出来事をなぞっているように。

でもそうなると、この後の展開は私にとっては良くないはず。ふたりはきっと別れない。

泣きじゃくるエミリーを見つめながら、私は記憶に刻まれた前世の出来事を思い起こした。