「出来てるけど、どうしたの?」

ライがやけに警戒しているように見える。あの人たちの見かけは村人って感じだし、武器も持っていないのに。

「顔つきがおかしい。用心した方がいいな」

「そうなの?……分かった」

この場はライに従った方が良い気がして、私は荷物を持ちいつでも動ける準備をした。

そうしている内にも男性達は岩場に近付いて来て、湧き出る源泉を目にすると、顔色を変えて手を伸ばした。

まるでライと初めて会った時の場面の様だった。

先頭の男性は手に触れた水が温かい事を知ると、あからさまな落胆の表情で項垂れ、掠れた声で言った。

「駄目だ! これは飲めない!」

それを聞いた他の男性も絶望の表情を浮かべる。どうやら入浴に来たのではなく、水を求めて来たようだ。


鞄の中身を思い浮かべる。
ライにしたように、水を提供してあげようかと思ったのだけれど、無理だ。
さっき飲んでしまったから、四人分には足りない。

「エリカ、ここを離れよう」

ライがそっと耳打ちして来た。

「でも……」

ライの言う通りにした方がいいのだろうけれど、あの男性達が気になった。

離れるのを躊躇っていると、信じられない光景が視界に飛び込んで来た。