それから直ぐに出発をした。
まだ少しフラフラしていたけれど、どうせ目的地でのんびりするのだから、さっさと移動した方がいいと判断した。

温泉に到着すると、早速お湯に浸かる事にした。
荷物を全てライに預け、ゆったりとしたワンピースのスカート部分に手をかけた。

「え? ち、ちょっと待て!」

ライがかなり慌てた声を出したけれど、気にせずワンピースを頭から脱ぐ。

と言っても、今日はライが一緒だから、昨日のように全裸になる訳にはいかない。
中には薄手で丈の短い、村の女性が水浴びをする時のような服をしっかり着ていた。

令嬢らしい乙女心が希薄になってしまった私にも、一応恥じらいはあるのだ。

岩場からゆっくりとお湯に入る。温かさが身に染みてそれなりに気持ち良い。だけど着衣状態では爽快とは言えない。
それに、露天風呂は好きだけど、ここまで野ざらしだと安全面に不安があって長く浸かってる事が出来ない。

「……衝立みたいなものを置いて、もっとちゃんとした温泉にしたいな」

そう呟くと、少し離れた所で見張りをしていたライが、チラリとこちらを向いた。

「何か言ったか?」

「うん、何か目隠しみたいなものが有ったらいいと思って。そうすれば服無しで入れるでしょう?」

私の言葉にライは驚愕の表情になる。それから少しの間を置いて溜息と共に言った。

「いきなり服を脱いで、とんでもない格好になったと思ったら、今度は服無しで入りたい? 少しは恥じらいを持てよ」

呆れたような声。私は首を傾げた。

「そんなに驚く事でもないでしょう? この辺りの村の女性はこんな姿で水浴びしてるわ。それともサウラン辺境伯領では、水浴びをする習慣がないの?」