「ああ。乾燥地帯に住む者からすれば、喉から手が出る程欲している人材だ」

と言う事は、私はサウランに行けば引く手数多だと言う事?……良い事を聞いた。

「でも、水の恵みをもたらすと言うのはどういう意味? 水の鑑定が出来たって水不足を解消出来るとは思えないけど」

首を傾げながら問うと、ライは何を言っているんだ?とでも言いたげな顔で答えた。

「井戸を掘るのに必須の能力だろ? 水の鑑定士が言う場所を掘れば必ず水源に当たるんだから」

「つまり、地中のどこに水源があるか分かると言う事?」

「そう聞いてるけど……違うのか?」

ライは怪訝そうに言う。

「ライの言う水の鑑定士の事は分からないけど、私は井戸を掘った事はないわ。地中の水を探そうなんて考えた事も無かったし」

私が出来る事と言えば、身体に触れた液体の情報を読み取るだけだ。遠く離れた、地中深くの事なんて分からない。

そう思いながらも地面に意識を向けてみると、足元に不思議な感覚を覚えた。まるで足の裏から体の力が抜けて行くよう。

「え?」

私は立ち止まり足元を凝視する。そうしている間にも感覚は強くなる。足を中心として円が広がって行くように、どこまでも大きくなっていく。
途中、ヒンヤリとした固まりを感じた。これは水?
それから、反対の方向に温かい何かがある。

これは何? ……もしかして源泉?

もっと詳しく知りたくて、更に意識を足元に集中させようとした。
けれど、その途端に激しい目眩を感じ私の身体はグラリと大きく揺らぎ、足元の感覚もプツリと途絶えた。

視界が定まらない。クラクラとして立っていられない。

婚約者と妹の密会場所に突撃しようとした時の様に、後ろにひっくり返ってしまう事を覚悟した。

だけど、「エリカ⁈」と名前を呼ぶ焦った声を耳にした直後、フワリと体が浮き上がる。

「……え?」

状況が把握出来ずに目を瞬いていると、ライの綺麗な顔が目前に迫った。

「大丈夫か? もしかしてどこか悪いのか?」

どうやら私は、ひっくり返る直前にライに救助されたらしい。

彼は咄嗟に持っていた荷物を投げ出し、私を支え抱き上げたようだ。
私は彼の意外と逞しい腕の中にいた。

「あ、ありがとう。大丈夫よ、どこも悪くないから」

そう言い地面に降りようとしたけれど、ライは私を抱く腕に力を入れそれを阻んだ。