「おい、どうしたんだよ?」

私が黙り込んだからか、ライが困惑した様子で声をかけて来た。

「ごめんなさい、ちょっと腑に落ちない事が有って……昨日、ライが体を清めたお湯は温泉と言ってただのお湯じゃなくていろいろな効果があるの」

「たとえば、どんな?」

「ライが実感した身体の疲れが取れたり、スッキリするのも効能のひとつよ。他にもあるけど、今のところはっきりしているのは美容効果。ライは変わらないみたいだけど、私は髪も肌も凄く綺麗になったの」

「髪と肌が綺麗に?」

ライは驚いた様子で、私をまじまじと見つめて来る。

「……もしかして、全然綺麗じゃないと思ってるでしょ? サウラン辺境伯様のお城にいるような姫達とは比べないでよ? あくまで私としては綺麗になっているって事だからね」

少し拗ねて言うと、ライは慌てて弁解して来た。

「違う、そんな事思っていない! ただ、湧き水にそんな効果があるなんて聞いた事が無かったから驚いていたんだ。湧き水が温かいのだって不思議なのに……」

「あの湧き水は、地中の熱で温まったのよ。地中深くは私達が歩いている地面より温度が高いから」

「そうなのか? ……知らなかった、サウランでもそんな講義は無かった。エリカは物知りだな。どこで学んだんだ?」

「え? それは……独学?」

さすがに、前世の記憶とは言えないから、そう答えたのだけれど、ライは瞠目して言った。