コンラードが握手を求め手を差し出す。
ライは少し戸惑いながらも、応える。

「ありがとうございます。しばらくお世話になります」

コンラードは頷くと、私達を応接間へ案内した。

田舎の領主館の応接間だけあって、目を引くような豪華な調度品も装飾品もない。
けれど、木の温もりを感じる調度品や、暖色系の敷物などが、居心地の良い空間を作っている。

私は割と気に入っているその応接間を、ライは珍しそうに見回していた。

「どうかした?」

問いかけると、小さく首を振る。

「いや、サウラン辺境伯領でも貴族の館に行った事が有ったけど、大分雰囲気が違うと思って」

「貴族の?……ああ、学生仲間の家? 」

「仲間って訳でもないけど」

ライは直ぐ様否定した。その事についてあまり話したくなさそうで口を閉ざしてしまう。

もしかしたらその貴族と揉めたのかもしれない。
だとしたら嫌な思い出だろう、あまり追求しない方が良さそうだ。

そう考えている内に、コンラードが、話を切り出した。

「さて、ライの仕事についてですが、何をしたいか希望はありますか?」

ライは直ぐに質問に答える。

「いえ、選り好みはしません。働かせて貰えるだけで有り難いです」

今気付いたけれど、ライはコンラードに対しては丁寧な言葉遣いだ。
サウラン辺境伯領で学んでいただけ有って、礼儀はしっかりしているみたい。

コンラードもライに好感を持ったのか、嬉しそうな表情で話しを続けた。

「それは良かったです。では、ライにはお嬢様の護衛をお願いする事にしましょう」

「えっ?」