さて、私の力についてだけれど、貴族の中では真ん中より下の位の子爵家の出身である事から、大して強くない。

けれど、とても珍しい力を持っている。

それは、【水を感じる力】

水をはじめとした液体に触れると、それがどんなものか理解出来る。

大雑把に言えば、飲めるのか否か。
更には成分のようなものが頭に浮かぶ。

私の周りに同じ力の持ち主はいない。
以前王立図書館で沢山の蔵書を調べたけれど、記録にも出て来なかったとてもレアな能力だ。

ただし、今まで役に立った事はない。

だって食事中に出て来る飲み物をいちいち【飲料用か?】なんて確認しないし、触って成分が分かったところで、その情報を役立てる機会はない。
毒味係にいい能力かな?と思った事もあるけど、飲み物ではなく食事に毒を仕込まれたら終わり。

なんとも役に立たない力なのだ。

レアな能力でも、ちっとも有り難みがない。
エミリーの力【花を早く咲かせる】力の方が数倍役立つ。

それにしても、同じ母親を持つ姉妹だと言うのに、エミリーの方に良いところばかりが集まった気がする。

容姿も精霊の加護も……誰かに愛される魅力も、私はひとつもエミリーに叶わなかった。

時期当主夫人として努力していたから勉強だけは勝っていたけれど、今となってはそれも無意味になってしまった。

そんな事を考えていると暗い気持ちに陥りそうになり、私はブンブンと首を振って後ろ向きな思考を振り払った。