教えて貰った泉は村の外れから、ゆっくりと歩いて一時間ほどの場所に有った。

周囲を樹々に囲まれた中に岩場があり、そこから緩やかに水が湧き出ている。

「これって……」

ある予感を持ちながら私は湧き水を手で掬った。
村の人が言っていた通り温かい。水と言うよりお湯だ。
そしてこのお湯は太陽で温まったものなどではなく、地中より湧き出る源泉だった。




◇◇◇

この世界の王族貴族は、生まれついて特別な力を持っている。

炎を生み出したり、風を呼んだり、時には傷を癒したり。

人智を超える【精霊の加護】と呼ばれるその力は、多種多様だけれど、力の強さには法則がある。

国王を頂点に上位貴族、下位貴族と続いて行くのだ。これは、遥か昔一番力の強い者が王に、続くものが上位貴族になった為だ。

力の強さは遺伝する。だから、平民で力を持っている者はいない。

持っているとすれば、過去に貴族の血が入っていると言う事だ。

私も含む、貴族令嬢の外出が自由なのはこの為だった。【精霊の加護】は下手な護衛より余程頼りになるから。