トレヴィアまでの道中は、宿の部屋を分けることになった。

寂しいけれど、ライの睡眠を考えれば仕方がない。

ミント村を出て五日目。

懐かしいトレヴィア王都のクレッグ子爵屋敷にに到着した。

「エリカ! よく帰ってきた」

お父様は私の顔を見た途端に抱きついてきた。

相変わらず愛情深いお父様。私は笑顔になりながら、今にも泣きそうなお父様を宥める。

すると、騒ぎを聞きつけたのかレナードとエミリーがやって来た。

「え?……お姉様なの?」

エミリーは私を見て呆然としている。
温泉効果を受けてから初めての再会だから、私の容姿の変化に驚いているようだった。

エミリーの隣のレナードは、ライに気付くと顔をしかめた。

「お前、図々しくここまで来たのか? なんて奴だ! おい、誰かこいつを追い出してくれ」

余程ライを恨んでいるのか喚くレナード。
私は素早く前に出て、お父様にライを紹介した。

「お父様、こちらはフォーセル大公家の、グラウディウス・ライ・ド・フォーセル様です。ライ、私のお父様よ」

「えっ?」

私の発言を聞き、皆が唖然としてライを見つめる。

お父様は呆けて。レナードは真っ青になり、エミリーは見惚れているのか頰を赤く染めて。

ライは堂々とした態度でお父様に頭を下げた。

「初めてお目にかかります、クレッグ子爵殿。この度はご息女エリカ姫との婚姻を許可頂きたく、ご挨拶にあがりました」

「えっ? エリカが結婚? フォーセル大公家と?」

お父様を始め、皆が信じられないといった様子で動揺している。

その様子を眺めながら、私は言った。

「とにかく落ち着きましょう。ライ屋敷を案内するわ」

レナードとエミリーの驚愕と羨望の視線に、胸がスッキリするのを感じながら、私はライの腕を引いた。