「エリカ、大丈夫か?」

「うん……ごめんね、取り乱して。まさかライに会えるとは思わなかったから、驚いて」

「いや……エリカ、すこし痩せたか?」

「そうかな? 確認してないから分からないけど」

本当は結構痩せてしまっていた。
ライがミント村を出てから、あまり食べられなくなったし、寝つきも悪くなってしまっていたから。

「ミント村リゾートの成長は聞いている。今ではフォーセルでも噂になる程だ」

「そっか……それは凄いな、フォーセルにまでなんて。ライのおかげだね」

「そんな事ないだろ? エリカの努力の結果だ」

「ううん、ライが支えてくれたからだよ。そう言えば、次期大公様になると決まったんだってね、おめでとう。ライも頑張っているんだね」

本当は、こんな風に気安く話ではいけないのだろう。
だけど、今だけは昔のように過ごしたい…ライもそう望んでくれている気がする。

その証拠にライは優しい笑顔だ。

「ああ、頑張ったよ。早く迎えに来たかったからな」

「え、迎えって?」

「エリカをだよ。逃げ回っていてもエリカを守れない。俺が力を持ってふたりで居られるようにしないと駄目だって気付いたから」

「……それって、どういうこと?」

首を傾げる私の前でライは、騎士の様に片膝をついた。

「ど、どうしたの?」

慌てる私の手をライはそっと掴む。
それから、真摯な目を向けて来た。

「エリカ・クレッグ子爵令嬢。どうか私の、グラウディウス・ライ・ド・フォーセルの妻になって頂きたい。あなただけを愛し守り続けるとここに誓います」

「……え?」

今のはトレヴィア貴族の正式な求婚の儀式。
レナードにはされなかったので、私にとって初めての事だけれど、知識としては知っている。

だけど、ライからそんな事をされるとは思ってもいなかったから、頭が真っ白になってしまう。

突然の事に惚ける私を、立ち上がったライが抱き寄せる。

「エリカ、愛しているんだ。離れていても忘れた事なんて無かった」

いつものライの口調で言われ、ようやく実感が湧いて来た。

同時に涙が溢れ、驚きと喜びで身体が震える。

「ライ……ライ、私も愛してる。 仕事が上手くいっても、大事なフタッフに囲まれていてもライが居ないと駄目だった。幸せになんてなれなかった……私、ライがいてくれないと幸せになれない」

「エリカ……俺も隣にいて欲しいのはエリカだけだ。エリカ無しじゃ幸せは感じない」

「ライ……寂しかった。本当はずっと前から好きだったの。もう離れたくない」

そう訴え逞しい胸に頰を寄せる。

ライの鼓動を感じて、私の胸も早鐘を打つ。