ライが落ちてしまう!

そう思いパニックになり固く目を瞑った私は、いつの間にか、力強い腕で抱かれていた。

「エリカ、落ち着け、大丈夫だから」

そう言われ目を開ければ、確かにライの腕の中にいる。

でも……どうして空に浮かんでいるの?

あり得ない状況に口をパクパクしている内にライに運ばれ地上に戻る。

地面に降りると、安堵したせいか体の力が抜けてしまった。

ざっくりとえぐれてしまった大地。それに空を飛んだライ。

もう何もかもが信じられない。

ぐったりとする私の元にオリバー様がやって来た。

「エリカさんごめんね、怖かっただろ?」

「……怖いっていうか、死ぬかと思いました」

オリバー様は眉を下げる。

「そうだよね。本当にごめん。でもこうでもしないとライは力を使わないから」

「え? 今のってもしかしてオリバー様が?」

「うん。僕の力は大地を操るものだからね。それでライが風を自在に操る力。エリカさんが危険になったら絶対にライが動くだろう? だから悪いとは思ったんだけど」

「……そ、そうですか」

あれが精霊の力? 大地を崩し、空を飛び。

王族や高位貴族の力は強いと知っていた。だけどあまりに桁が違いすぎる。

ああ、もう全てが許容範囲を超えてしまった。

気絶するなと言われていたけれど耐えられなかった。

私はライに抱かれたまま、ガクリと意識を失ってしまったのだ。