「カミラさん、本当にそろそろ止まって下さい。気付かなかったかもしれないけど、少しづつ山を登って来ているんです。この先には崖もあるし危険です」

「ええ? エリカさんもライも結構臆病なんだから。崖の下を覗いてみたかったのに」

「いや、本当に危ないですよ」

今まで崖から落ちたなんて人は聞いた事が無いけれど、用心に越した事はない。

カミラさんはちょっと不服そうにしながらも渋々といった様子で馬を止めた。

「じゃあ、この辺で話しましょうか」

カミラさんは馬を降り、目についた大きな岩の近くに座った。
ライと私もそれに続く。

「まずは、エリカさんに謝らないとね。今まで騙してごめんなさい」

「いえ……もういいです。凄く驚きましたけど」

「本当に驚いてたね。まさか気絶しちゃうとは思わなかった」

「あ、あれは……」

まさか男性の裸を見てショックを受けたとは言えない。

「それよりどうして女性のふりをしていたんですか?」

「うーん……それは深い事情があるんだけど、ライは話すのを渋っているんだ。でもエリカさんは本当の事を知りたいよね?」

ライが?

隣に視線を向ければライが気まずそうな表情を浮かべている。
どうして私に話したくないのだろう。寂しく感じながらカミラさんに答えた。

「知りたいです」

「そう。それなら長々と話すのは好きじゃないので端的に言いたいな。驚いてまた気絶しないでね?」

「あ、はい、大丈夫です。基本的にそんなに気が小さいほうじゃないので。昨日のは珍しいんです」

「そう? それなら言うけど、女のふりをするのはいつもの事なの。この容姿だから簡単に皆は騙されてくれる」

「そうですね、私、王都でもカミラさんより綺麗な女性を見た事がありません」

「ふふ、ありがとう。それでそもそもなぜ女になっていたかと言えば身分を隠すため」