「あら、珍しくベンチが空いているわ。エリカさん少し休憩しない? 喉が渇いたので果実水を飲みたいわ」

「え? ああ、そうですね。では貰いに行ってきますので、カミラさんは座っていてください」

私は踵を返して、飲み物の販売ワゴンに行く。

冷たい果実水をふたつ頼むと、両手に持ってカミラさんの待つベンチに戻った。

「お待たせしました」

果実水を差し出すとカミラさんは嬉しそうに受け取る。

「ありがとう。これとても美味しいのよね」

「私も好きなんです。柑橘系のさっぱりした感じが」

果実の配合など、いろいろ試してスタッフみんなで試飲して決めたものだから自身が有った。
気に入って貰えると嬉しい。


「こうやって外で飲むと更に開放感が出ていいわ。もっとベンチがあるといいのだけれど」

カミラさんの発言に、私はすぐに反応して辺りを見回す。

なるほど、確かに椅子が少ないかもしれない。

いくつか追加しようと、頭の中で計画を進める。

「ねえ、エリカさん、私の休暇も残り少ないしお願いがあるの」

「お願いですか? 何でしょう?」

「一緒に温泉に入ってくれない?」

「え?」

予想もしなかった申し出に私は戸惑う。

「ほら、私いつもひとりで入っているでしょう。とても気持ちが良いのだけれど、家族連れがおしゃべりしながら入っている所を見て羨ましく感じたの。だからエリカさんと一緒に入れたら楽しいだろうと思って」

「ああ……そうですね。にぎやかに入るのも良いものです。私で良ければ」

ミント村温泉には混浴はない。ライとは一緒に入れないものね。

承諾するとカミラさんは子供のように喜び笑った。

その無邪気な一面はとても可愛く、同性の私でもつい見とれてしまう。

ライが見たらきっと、くらっと来るだろうな。