「あの、エリカさん。一つ聞きたいことが」

「どうしました?」

扉に伸ばしていた手を引っ込め、カミラさんに向き合う。

すると彼女は穏やかに微笑み言った。

「エリカさんとライはどのような関係?」

まさかそんな事を聞かれるとは思っていなかったので、とても驚いた。

目を瞠る私に、カミラさんは続けて言う。

「以前泊まったときに、エリカさんとライは仕事仲間にしては距離が近いと感じたの。もしかしてふたりは恋人同士?」

ストレートな質問に私は動揺しながら、なんとか答える。

「い、いえそんな関係では……ただライの本来の仕事は私の護衛なので、それで一緒にいる事が多くなっています」

「彼が護衛? ……そうね、エリカさん程の綺麗な人には護衛が必要かもしれないわ」

カミラさんは、「それはあなたの方では?」と言いたくなるようなセリフを真面目に言うと、何か考えこむように黙り込んだ。

かなりライの事を気にしている様子。


お客様に気を遣わせない為、私が子爵令嬢だと言う事は伏せている。

だから、小さな宿主の私にわざわざライが護衛についている事が不思議なのだろう。

そして、カミラさんはライの事が好きなのかもしれない。

以前はライの一方的な好意に見えたけれど、実際は違かったのかも。

胸の奥が鈍く痛む。けれど、私はそれを隠してカミラさんに笑顔を向けた。


「カミラさん、ライを呼んで来ましょうか?」

「え?」

「ふたりは知り合いのようですし、お話もあるでしょう?」

「ええ……そうね」

カミラさんは意外そうな顔で私を見る。

「エリカさんはそれでかまわないの?」

「……はい。今日は外出の予定はありませんし」

「そう。それならお願いします。ライとはサウランで親しくしていたのよ」


さらりと告げられた言葉に、私は内心動揺した。


「そうなんですか、知りませんでした」

ライはそんな事一言も言っていなかった。あえて隠していたのかもしれないけど。


気持ちが沈むのを自覚しながら、私はカミラさんに断り部屋を出て、その足でライの元に向かった。