「値段を変える? 高くしたら客が来なくならないか?」

ライは乗り気ではない様子。

「滞在目的で部屋を分けたらいいかと思って。今の部屋は旅の途中に立ち寄る人用。新しくつくるのは温泉目当てで来てくれる長期滞在の人用の部屋よ」

最近は、評判を聞いた温泉目当てのお客様もくるようになっていた。

そういう人は、旅の途中の人に比べ滞在が長い。
だからもっと暮らしやすい、広くて設備が充実した部屋を作れば予約する人がいると思う。

もともと観光で温泉に入りに来れるような人は経済的に余裕があるから、価格より過ごしやすさを重視すると思う。
宿泊費を少し上げたところで、問題ないだろう。

ライは感心したように言う。

「なるほど。確かに最近は長期の滞在者が多いな」

「そうなの。だから新しい部屋はベッドを今までより広くして、それと別に小さなソファーも置きたいわ。食事もそれなりに良いものにして、一般の部屋と差をつけるのよ。王都にあるような高級宿のような高値にする気はないけど、多く支払うならそれなりの特別感は欲しいでしょ?」

「そうだな……エリカは本当によく考えているな」

「そんな事ないけど」

私のオリジナルアイデアという訳ではないし。

「以前、何かの本で読んだ事を真似してるだけよ」

最近、前世の記憶での知識を話すとき、【昔本で読んだ】と言い訳している。

初めは何の本だ?って突っ込んで来ていたライも、細かい事は忘れてしまったと答えてばかりの私に、聞くのを諦めたようだった。