コンラードと王都屋敷のモリスの調査により、エミリーの件は真実と嘘半々といったところだと言う事が判明した。


エミリーが第三王子に対し、好意を抱いていたのは傍から見ても明らかだったそうだ。


けれど、第三王子の方はエミリーを相手にしていなかったので、完全な片思い。
当然不貞の事実はなかったそうだ。そもそも第三王子は婚約者の公爵令嬢ととても仲が良いらしい。


レナードが聞いたのは、エミリーが一方的に王子に付きまとっているところだったと思われる。


そもそもなぜエミリーが王子と面識を持てたのかと言えば、レナードの婚約者になったからだ。

侯爵家の人間の彼には、私たちクレッグ子爵家では持てない上位貴族の繋がりがある。

王族が主催の夜会にも出席することが出来る為、そこでエミリーは王子を初めて間近で見て憧れをもってしまったのだろう。

多分、悪気なく。

だけどレナードとしては面白くない。あれ程自分に夢中だったはずのエミリーがあっさり心変わりしてしまったのだ。しかも相手は侯爵家でも手出しが出来ない王族。

かと言って簡単にエミリーと婚約破棄することもできない。自分にとっても二度目の婚約破棄は痛手だし、不貞の事実自体も無いから世間からの同情心を引けないからだ。


そのような状況で気が収まらないレナードは、私が携わっているミント村の業績に気付き、慰謝料として取り上げようと乗り込んで来たそうだ。

けれど、そこで再会した私が思っていたより自分好みにの姿に変わっていたので、一石二鳥とばかりに愛人契約を持ち掛けた。

レナード曰く、私が断るとは思っていなかったらしい。

彼の中では私は失恋して傷心のまま領地に引っ込んだ哀れな女なので、自分が申し出れば喜んで身体を差し出すと考えていたのだそう。


もう、バカじゃないかとしか言えない。
ほかに言葉が出て来ない。

レナードって自分に都合よく考えることについては天才なのかも。



交渉の結果、エミリーの心の浮気は、レナードの私への暴行未遂で差し引きとなり、賠償などは無しに。

エミリーがレナードに対して謝罪することで、ふたりは寄りを戻し予定通り結婚することにしたそうだ。

ちなみにレナードから私への謝罪は無かった。


けれど、そんな経緯をしったお父様はほぼ隠居の身ながらも頑張ってくれて、私にミント村の権利を譲ってくれた。

小さな領地だから移譲の際に国に支払うお金も大したこともなく、ニ十歳の私の誕生日に手続は無事終了した。

私は本当の意味でレナードから解放され、自立する事が叶ったのだ。