お母様が受け継いだ領地は、トレヴィアの王都から馬車で五日程かかる、国境近くにある平坦な土地だ。

大きな川が領地の真ん中を流れ、そのほとりに小さな村がふたつある。

周囲には我が家のような弱小貴族の小さな領地が点在しているのだけれど、南側だけは、サウラン辺境伯様の広大な領地と接している。

私は行った事がないけれど、辺境伯領は王都にも引けを取らない程華やかに発展していて、多くの人々が集まる大都市だそうだ。

サウラン辺境伯領の更に南には高い山々。その先には、フオーセル大公国がある。

新しい家での生活が落ち着いたら、どちらにも遊びに行ってみたい。
見知らぬ街並みや、風景を想像するとワクワクした。

そう言えば、前世の私も旅行が大好きで、それが高じてリゾート経営会社で働いていたのだった。
恋人と別れた後は、好きな仕事に熱中することで、失恋の痛みを紛らわしていた。

今回の出来た傷も、何か夢中になれる事を見つけたら、きっと忘れられるはず。