「いいか。エリカは自分が思っているより抜けてるし、鈍感だと言うことがはっきりとした。だからこれからは勝手な事をするなよ? 男と二人きりにはなるな。なんかあったら俺を呼べよ」

ライは妙な気迫と共に私に約束を強いて来る。
私は圧されて、ついコクコクと頷いた。

これじゃあどちらが雇い主か分からない。完全に立場逆転している。

それに男とふたりきりになるなって言うけど、今の時点でライとふたりきりなんだけど、これは例外?ライならいいの?

じっと見ていると、ライが怪訝な顔をした。

「どうした?」

「いえ、何でもない」

「……本当に気をつけろよ?」

「はい、ごめんなさい」

そう答えるとライはほっとした表情になり、私をソファーに引っ張っていく。

触れた手は暖かくてほっとした。

レナードに触れられると鳥肌が立ったのに、ライに触れられると安心する。

どうして?と考えるまでもなく、私はその理由に気がついた。

本当はもうだいぶ前から感じていた。だけど、考えないように目を背けていた気持ち。

ねえ、ライ。
「俺を呼べよ?」って言うけど、これからもずっとそばにいてくれるの?
変わらずに、私を助けてくれるつもりなの?

もしそうだとしたら私は……。


「どうかしたか?」


じっと見つめているとライが戸惑った表情をした。

私の気持ちを言葉にしたら、ライはどう反応するだろう。


「やっぱり調子が悪そうだな。温かい飲み物をもらって来た方がいいな。少し待っていられるか?」


私は直ぐに首を横にふる。


「いかないで。側にいて」


今もこの先も。どうか私の側にいて。


「……やっぱり怖かったよな。お茶はラナが来たら頼もう」


ライはソファーに座る私の前に跪き視線を合わせると優しく笑う。

ああ、なんだか涙が出そう。


やっぱり今の私は情緒不安定になっている。
ライにしがみついて「どこにもいかないで」って訴えたいのだもの。

そんな事は駄目だと分かっているのに、こみ上げある衝動はなかなか消えてくれなかった。