「……部屋を出てください。今すぐに」

眼光鋭く睨まれ、レナードは小さな悲鳴を上げながら、部屋を出て行く。

その情け無い後ろ姿を見送っていると、泣きそうな顔をしたラナが駆け寄って来た。

「お嬢様! 良かったご無事で……」

「心配かけてごめんなさい」

「いいえ、そんな事。お嬢様が無事なのが何よりですから。でもレナード様がこんな無体を働くなんて信じられません」

「そうね、私も驚いたわ。助けが入らなかったら危なかった。ライを呼んでくれて本当にありがとうね」

「いいえ、侍女として当然です」

「頼もしいわ」

微笑みながら言うと、ラナはほっとしたのか、改めて部屋の中を見回した。
ベッドの乱れた様子を目にしたラナは、独り言をつぶやく。

「あら? お嬢様お休みだったのですか?」

「いえ、何でもないの。ちょっと足をかけてベッドに倒れてしまったの」

ラナの言う【無体な事】と言うのは、私を鍵をかけた部屋に閉じ込めた事だ。
実はそれ以上の事をされたなんて言ったら、きっとショックを受けてしまう。

誤魔化していると、ライが話に入って来た。

「この事はコンラードさんにも報告した方がいい。ラナ、彼を呼んできてくれないか?」

「ええ、分かったわ。ライはお嬢様とここにいて。レナード様が戻ってきたら大変だもの」

ラナはライの事はすっかり信用しているようで、なんの躊躇いもなく、部屋を出て行く。

ふたりきりになると、ライは浮かない表情で私を見た。