「エリカ、僕はエミリーと夫婦になる自信を失ったよ」

「そ、それは当然です……本当に申し訳ありませんでした……謝っても許される事ではありせんが」

「そうだね。許せないよ、でも婚約解消も簡単ではない。クレッグ子爵家と二度も婚約破棄したとなれば、僕の名前にも傷がついてしまう」

レナードは今すぐエミリーと別れる気はないようだった。

男性とはいえ、大した日を置かずの婚約破棄はダメージになるからだ。

それでも無罪放免というわけにはいかないだろう。

クレッグ子爵家は、レナードに償わなくてはいけない。

おそらく賠償金の支払いになる。または、どこかの領地の権利を譲るか……まさかこのミント村を?

そう思い立ち青ざめる私に、レナードは無情に宣言した。


「賠償として、このミント村の権利。それからエリカには、この地での妻になって貰いたい」

「……え?」

この地での妻って、どういう事?

混乱していると、レナードに腕を掴まれ引き上げられた。

そのまま腕を引かれ、ベッドに引き摺られていく。

「ち、ちょっと待って! 離して!」

レナードに聞き入れてもらえる事なく、私はラナが整えたベッドにに仰向に放り投げられる。

起き上がろうとするより前に、のしかかられた。

「妹の不始末は姉である君が償うんだ。僕は月に一度ここに視察に来る。君は僕を夫として誠心誠意支えるんだ」

レナードはニヤリと笑う。
背筋がぞわりと泡立った。

「わ、私に愛人になれっていうのですか?」

「愛人なんて言うな。ミント村での妻だ、嬉しいだろ?」

「う、嬉しくないし、結局愛人じゃない!」

「エリカが承知すれば丸く収まる。クレッグ家がなくなるのは嫌だろう?」

「それは嫌だけど……」

でも、レナードの愛人なんて同じくらい嫌!
こんなの脅迫じゃない。