「じゃあ早速――」

「あ! あー……っと、ちょっと待って。その前に」


グラスに口をつけようとした私に、店員さんはストップをかけた。

首を傾げて続きの言葉を待っていると、彼は困ったように頭をかいてから「三つ聞いてもいいですか」と改まったように背筋を伸ばした。

つられて私も姿勢を正す。

……なんだか、面接みたいだな。


「うるさいの……賑やかなのは好きっすか?」

「え? えっと、はい好きです」

「接客とか、したことありますか?」

「学生のときにコンビニのアルバイトをしたことはあります」


変わった質問をしてくるなあと思いながら、背筋を伸ばしたまま受け答えをする。いや、これは面接でもなんでもないわけだから、別に気を張らなくてもいいはずなのだけれど。

就活で頭の中が染まっている私は、どうすれば採用してもらえるか、相手に気に入ってもらえるかということを無意識のうちに考えてしまっていたらしい。



「じゃあ、……神様って信じますか?」


ちょっと冷静になれば、疑問に思うはずなのに。


「はい、信じています!」


相手はきっと、この答えを求めているのだろう。そう思って勢いのまま大きく頷いた私に、店員さんは呆れたように笑って「変なこと聞いてごめん、どうぞ」とグラスに視線を落とした。



 * * *



「そなたの信仰心には感心したぞ」


……おかしい。これはいったいどういう状況なのだろう。

店員さんに出してもらったお酒を飲み、その味と香りを楽しんでいたところまでは覚えている。濃厚なのに飲みやすくて、だけど今まで飲んだことのないような不思議な味がした。なんていう銘柄のお酒なんだろうと思い、店員さんに質問しようと顔を上げたとき、隣の席にお客さんがいたのだった。


「この時代に珍しく、我々を深く信じておるとは」


薄紫色の着物に身を包んだその人は、肌が白くて目鼻立ちがはっきりとした綺麗なお姉さんだった。