夏休み中、部活帰りにある生徒が交通事故に遭った。命に別状はなかったものの、これを機に学校周辺の道路状況などに危険はないか見直そうということになった。各クラスの学級委員が集まる委員会でそのことが話し合われ、一、二年の学級委員がそれぞれ分担して調査をしまとめるということになったのだ。

 そのため二年七組の学級委員である井上くんと私は今日、普段出ない南門から学校を出て駅には向かわずにこうして一緒に歩いている。


 狭い歩道を縦に並んで歩いていると、湿った生ぬるい風を受けて揺れたスカートが何度も足に貼りつく。前を見ると、井上くんはゆったり足を進めながら周りの道路を確認するように顔を左右に揺らしていた。


 委員会の仕事だとはいえ高校二年の男子ならば、こんなの適当にやればいいという考えに至りそうなものなのに、井上くんはそうではないらしい。通学路に危険はないか歩きながらきちんと目を光らせ、写真を撮ったり、真面目に委員会の仕事を全うしようとしている。


 テレビの中でマイクを持って歌っていたとしても違和感ないくらい整っていて、どこか中性的で綺麗な顔をしているのに、チャラチャラしていたり女をとっかえひっかえという噂もない。イケメンなうえに真面目とか、最強すぎる。ここまでくると、誰かに嫌われるということもないんだろうな。羨ましい。

 私なんて、嫌われないように毎日気を張っているのに。失敗しないように、間違えないように……。