今日お母さんは友達と約束があって帰りが少し遅くなると言っていた。スマホで時刻を確認すると、間もなく十六時になろうとしている。

 テレビをつけるとドラマの再放送が流れていた。学校の年間行事予定のプリントが机の下に落ちていたので拾い上げ、そのままベッドに寝転びなんとなく目を通す。

 体育祭は五月に終わったし、これからの行事で大きなものは十一月の文化祭と二月の修学旅行か。修学旅行は確か台湾だと言っていたな。台湾ってことはパスポートが必要だけど、それはお母さんが一緒に行って手続きしようって言っていたから心配ない。ベッドから手を伸ばしてプリントを机の上にのせた。


 そのまましばらくテレビを見ていると、少し瞼が重くなり、眠気が襲ってきた。

 お母さん、夕飯までには帰るって言ってたけど、少しだけ眠ってしまおうか。そう思った時、家のインターホンが鳴った。

 急いで飛び起きると、電気の点いていないリビングに駆け下りた。インターホンの画面には宅配業者が映っている。

『ちょっと待ってください』

 そう伝え、急いで印鑑を探した。前の家では箪笥の中にしまってあったから、和室にあるタンスの一番上の引き出しの左右どちらかだろうと思い、右側を引いた。入っていたのは封筒や書類のようなものだったけれど、一応ガサゴソと漁ってみる。


『ん?』


 上から何枚目かの書類が目に留まった。戸籍謄本と自分の名前が書かれていたからだ。けれど今はとりあえず印鑑。そう思い、今度は左側の引き出しを見ると、青いケースに入っている見慣れた印鑑があった。


 急いで玄関に行き宅急便を受け取る。両手に収まるくらいの段ボールで、時間指定は十八時からになっていた。

『まだ十八時にはなってないと思うけどなー』

 独り言を吐きながら荷物をダイニングテーブルの上に置き、印鑑を引き出しにしまう。そして私は、視線を右側の引き出しに移した。

 さっきの戸籍謄本は、もしかしたらパスポートを作るためにお母さんが用意してくれたのかもしれない。お母さんが揃えておくから一緒に行こうと言っていたし。