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夏休みも終わりに近付くと、徐々に憂鬱になってくる。一ヶ月半もある夏休み。始まる前はとても楽しみだけど、始まってしまったら案外あっという間に過ぎてしまう。
今年の家族旅行は伊豆に行ったし、夏休みはそれなりに楽しかった分、あと一週間で学校が始まると思うと本当に憂鬱だ。
夏休み中ヒナコとアヤは部活が忙しかったし、ミサは部活に入っていないけど、私だけを誘って二人で遊ぶということはなかった。だから四人で遊んだのは結局一度だけ。
夏休みくらいはなにも考えずにのんびり過ごしたいと思っていたから、頻繁に誘われなくて良かったと思っている反面、せっかくの夏休みなのに仲の良い友達と花火大会や夏祭りに行けないのは少し寂しいという気持ちもあった。でも仕方ない。私には仲の良い友達なんていないんだから。
お互いのことならなんでも知っていて、なんでも話せて気を許せるような友達は誰もいない。いるのは表面上の友達だけだ。
本当の友達がどうすれば出来るのかなんて分からない。信じていても裏切られるかもしれないと思ったら仲良くなんかなりたくないし、友達関係で傷付くくらいなら周りに気を使って合わせることぐらいなんでもない。
いっそ一人でいた方が楽なのかもしれないけど、それが出来ないのが学校という小さな世界だ。嫌なら一人でいればいいなんて、実際には無理だから。一人では絶対にいられない場面が学校生活には必ずある。班行動やグループ発表、修学旅行や体育祭、一人でいられるはずがない。それに、嫌われて孤独になることほど辛いものはない。
そんなふうに友達との関係で気を張りながら学校に通っていると、家の中がまるで天国のように感じられる。いたって普通の家だけど、私にとっては唯一気を抜くことが出来て、唯一自分でいられる場所だから。