「正輝はほんと学級委員って感じだけど、愛花も偉いよね。やっぱ私の言った通りだ」

「え?」

「クラスで委員会決める前に言ったじゃん。愛花は優しいし、意外とクラスをまとめるのも上手そうって」

「あ……うん、そうだね。ミサがそう言ってくれたから、やってみようかなって思ったんだ」


 違う。本当はそうじゃない。


 ヘラヘラと笑いながら、私は湿った自分のスカートを握り締めた。


「じゃー私達もパン買うから、また来週ね」

「うん、また来週」

 ミサが一歩前に出たので、私は横にずれてミサに小さく手を振った。傘を閉じて自動ドアが開き、中に入る前にミサが再びこちらに視線を向けたので、私は笑顔で手を振る。

 自動ドアが閉まり、私に背を向けたのを確認したところで、足早にその場を離れた。


『愛花は優しいから、上手くみんなをまとめられそうじゃん。学級委員とか合うんじゃない?』

 委員会を決める日の朝、ミサにそう言われた。


 二年で同じクラスになったミサは、私と正反対の場所にいる人だと思った。毛先にカールがかかった長い髪も、綺麗に引いたアイラインも、くるんと上を向いた睫毛も。ハッキリと話す声も、流行りに敏感なところも、いつもクラスの女子の中心にいるところも、全部が私と正反対。

 一番、仲良くなりたくないタイプだった。

 学級委員が合うというのも、一番誰もやりたがらない委員を私にやらせようと思って言った言葉なんだ。面倒だから、押し付けるために。でももしかしたら本心で言ってくれた可能性もあるけど、嘘なのか本当なのか見抜く力は私にはない。
 自分のことさえ見えていないのに、他人の気持ちなんか分かるはずない。