空が暗くなっても私を罵倒するような幻聴が鳴り止まずに、気づけばまた夜の海へと向かっていた。
部屋にスマホを置いたまま、フラフラとサンダルで外に出る。4日ぶりの外の空気は別になにも変わってなくて、長袖だとむし暑く感じるほどの気温だった。
海に着いた私は、さざ波の音に耳をすませながら砂浜へと座る。
……やっぱり夜の海は私をより一層孤独にさせる。
学校には行けない。行きたくない。でも、このまま家に引きこもってるわけにもいかない。
だったら私はどこに行けばいいんだろう。
私の居場所なんて、どこにもない。
暴力を受けていた時のように膝を抱えて丸くなっていると……。
「なにしてんの?」
波の音に混ざって聞こえてきた声。
「……な、なんで……」
顔を上げると、月明かりに照らされたヒロが立っていた。
私と同じようにパーカーを着て、腹部のポケットに両手を入れている。
「なんでって、俺だってひとりでここに来ることぐらいあるから」
ヒロはそう言って砂浜にあぐらをかく。
隣、というには遠いけど、他人同士とはいえないぐらいの近さはある。
ヒロは座ったあと、被っていたパーカーのフードを取った。暗闇でも分かるぐらいの金髪は月に照らされると、さらに色を濃くして、サラサラと音もなく揺れる。
さっきまでどんよりとしていた空気が、ヒロが来たことによって清んだものに変わった。
でも、今はヒロに会いたくなかった。
だって私は消えたくてたまらない。
明日のことを考えるより、海に入って私自身を終わらせようって、そんなことさえ思っていたから。