バイクのパーツが色々と剥き出しで、なにがどんな役目をしてるのは私にはさっぱり分からないけど、フォルムはすごくカッコいい。
「なに、興味あんの?」
ヒロはバイクに股がったあと、ヘルメットをゆるく被った。
興味と聞かれて私は首を横に振る。ただ見慣れないものだったから、見すぎてしまっただけ。
ヒロは右手でブレーキをかけながら、サイドスタンドを足で上げる。そしてエンジンをブンブンと鳴らすと、マフラーも小刻みに揺れはじめた。
「もう倒れんなよ」
ヒロはそう言ってバイクを発進させた。
音は耳を塞ぎたくなるほどうるさくて、排気ガスの匂いが辺りに充満する。
遠ざかっていく背中を見ながら、助けてもらったお礼を言い忘れたことに気づく。
……結城ヒロ、か。
男なのに、普通に喋れたのは何年振りだろう。
震えも恐怖も不思議となかった。唯一あったのは……。
『バカ。嘘だよ』
不良なのに、少し優しかったということだけ。