そんな中、公園にスマホの音が鳴り響く。それは私ではなくヒロだった。
長さからしておそらく電話。ヒロは画面を確認してすぐにスマホを耳に当てた。
「ああ、ミキ?」
トクンと、小さく鼓動が鳴る。盗み聞きするつもりはないけど、自然と聞こえてきてしまう会話。
〝ミキ〟
もしかして彼女かな?
ふたりの電話はすぐに終わった。スマホをポケットに閉まったヒロは立ち上がり、私も合わせるように腰を上げる。
「……待ち合わせとか……してた?」
私が倒れたせいで付き合わせてしまった。
「べつにいいよ」
ヒロの口調は軽かった。彼女を待たせているのなら良くはないはずだけど、私が口を出すことではない。
ヒロは歩いて帰ると思いきや、その足は公園の生い茂る木の下へと向かう。
そこには夕焼けに照らされた黒色のドラッグスターのバイク。
もしかしたらヒロは内緒でバイク通学をしてるのかもしれない。バイクはとても大きくて、原付きはよく街中でも見かけるけど、こんなに立派なものを間近で見たのは初めてだ。