もらった水を一口飲むと、スッと冷たさが身体に染み込んで楽になった。

助けられたのは、これで二回目だ。チラッとヒロを見ると、腕を後ろについて空を見上げていた。


顔の骨格や喉仏。首から肩までの筋やワイシャツから出ている腕も全部全部、男の子というより男。なのに、ちょっと睫毛は長くて、肌も綺麗。


すると私の視線を感じたのかヒロが「ん?」とこっちを見るから私は慌てて目を逸らした。


熱中症になりかけたせいで、なんだか今の私は変だ。


「あ、そういえば名前。アイツが聞きたがってた」

アイツ?私たちの共通するところにいる人物はひとりしか思い当たらない。

私がメールをシカトしたせいかな。別にこのまま名無しでも構わないけど。



「……サユ」

あえて名字は名乗らなかった。

本当は名前すら教える必要はないと思ってるけど、またメールで聞かれるぐらいならここで答えたほうがしつこくされないと思っただけ。


「ふーん。俺は結城ヒロ。晴丘の三年」

まさか自己紹介してくれるとは思ってなかった。

まあ、名前はすでに知っていたし、知らなかったことといえば学年が私よりもふたつ上ということだけ。


……三年か。それでもやっぱり大人っぽく見える。

ヒロは私に名前以外のことは聞かなかった。


もっとも開誠女子ということは制服を見れば分かるし、うちの学校は学年ごとにリボンの色が違う。

三年は白、二年は青、一年は赤だから、私のリボンを見ればおのずと年下だということも分かっていると思う。