ここはどこだろう。
目を覚ますと、オレンジ色の夕空が広がっていた。鼻には渇いた草木の匂い。ゆっくりと身体を起こすと、すぐに視線を感じて横を見る。
「……わっ」
隣にはあぐらをかいたヒロがいた。
な、なんで?
頭がパニックでなかなか思考が追いついてこない。そんな私を見てヒロは深いため息をついた。
「ったく。目の前で倒れやがって」
……え?倒れた?私が?
たしかにさっきまで歩道にいたはずなのに、私は今公園の芝生の上にいる。しかも日陰を選んでくれたのか、風とおしがよくて涼しい。
「は、運んでくれたの?」
ヒロがまた露骨にため息をしたから、きっとそういうことなんだろう。
どうやって運んだかはあえて想像しないことにするけれど、まさか路上で自分が倒れる日がくるなんて……。
体育の授業から明らかに身体がおかしかったし、まだほんのりとダルさは残っていた。
「軽い熱中症じゃね?」と、ヒロが呆れた顔をしてる。
ただでさえパーカーを着てる私は暑苦しいのに、長袖のジャージで2キロ走ったなんて言ったら絶対にバカにされそうだ。
「ほら」
ヒロは私にペットボトルのミネラルウォーターを差し出した。表面には水滴が浮かんでいて、買って間もないことが分かる。
「……え、な、なに……?」
声が自然としどろもどろになってしまった。
「なにじゃねーよ。飲め」
半ば強引に渡されたペットボトル。
「新品だから安心しろ。まあ、金は倍に請求するけどな」
「……っ」
「バカ。嘘だよ」
……あって思った。
高校生に見えないくせに、笑うと幼さがあって可愛い。
男に対してそんなことを思う自分にビックリだけど、なによりこうして肩を並べて座っても心臓は妙に静かだった。