以前一緒にテレビを見ていた時に、たまたま小さな男の子が遊んでる場面が映っていて。その時にヒロが『こんな風に姉貴の子どももサッカーしたりするんだろうな』って言ってた。


美幸さんが内緒にしていたことは知っていたから『なんで男の子だって分かるの?』って聞いたら『さあ、なんとなく』って笑っていたのだ。


普段は全然関心がないふりをしていたけれど、美幸さんの赤ちゃんが産まれる瞬間を一番楽しみにしているのはヒロかもしれない。



「……アイツ、そういう野生の勘みたいなところがあるんだよね」


ヒロとの会話を伝えると、美幸さんは瞳を潤ませていた。


「たしかにありますよね」

だから私もすぐに弱さを見抜かれてしまった。



「私ね、正直言うとヒロはもう大切な人は作らないって思ってた」


美幸さんの声のトーンが変わった。


「誰よりも残された側の苦しみをヒロは知ってるから。でも、それよりもあの子はサユちゃんと一緒にいることを選んだ。ヒロが自分の気持ちを優先させたことなんて、これが最初で最後だと思う」

それを聞いて今度は私の瞳が濡れていく。


「サユちゃん、ヒロを好きになってくれてありがとう」


「……逆ですよ」


お礼を言うのは私のほう。

ヒロが、私を好きになってくれてありがとうだよ。