「……か、買うならあちらのレジでお願いします」

たぶん声は届いた。雑音の店内でもまあまあ大きな声で言えたはず。


「えー俺らきみから直接買いたいんだけど」

「そうそう。俺たちのために愛情こめて焼きそば焼いてよ」


その言葉にぞわっと寒気が。そんなやり取りをしている間に鉄板の上にあった焼きそばが焦げてしまい、「あーあ」と、男たちに笑われる。


「もしかして声かけられて動揺しちゃった?彼氏いないの?ってかあんまり男に慣れてない感じ?」

ペラペラと止まることのない口。


「そういう経験がない子って新鮮でいいかも。焼きそばなんて焼いてないで海で遊ぼうよ」と、ひとりの男の手が私に伸びてくる。

フラッシュバックしたように恐怖心が蘇り、ビクッと泣きそうになっていると……。


「コイツに触るな」

私の腕を掴もうとする男よりも先にヒロが男の手を制止する。


「なんだよ、お前」

威勢よく男たちはヒロを睨んだけれど、自分たちより大きな身長と威圧感のあるヒロのオーラに「う……」と、怯んだ。


「焼きそばがほしいならレジに行ってください。もしこれ以上コイツにちょっかい出すなら無理やり追い出す」


ギロリとヒロが鋭い目つきをすると、男たちは徐々に後退り。そして「や、焼きそばなんていらねーよ!」と逃げるようにお店を出ていった。