「なあ、本当にボラ部ってなくなっちゃうのかよ」

衝撃の知らせの翌日。世間はゴールデンウィークに入ったらしい日の午前。
商店街の清掃活動に参加している最中に、突然テットが満杯のごみ袋を抱き締めてうずくまった。
案外ふつうにしているなと思っていたら、内心ずっと考えていたらしい。

「そうなんじゃない? 先生とマサムネ先輩も、はっきりと決まったからわたしたちに言ったんだろうし。仕方ないよ」
「カンナはそれでいいのかよ。なあ、どうにかならねえのかな」
「どうにかできるなら、とっくに先生とマサムネ先輩がやってくれてるって」
「そりゃそうだろうけどさ」

ボランティア部がなくなることについてはわたしもあれから考えていた。
廃部、と言ってしまえば簡単だけれど、部員にとってはひとつの居場所が奪われてしまうということになる。
ごみ袋を抱えたくなるテットの気持ちはよくわかるし、わたしだってこれからのことを思うとどうにもやるせない。
けれど、今さら何かを変えられるわけでもなく、受け入れるしかないということもわかっていた。
決められたなら、決められた道を歩くしかない。その中で、できることをするしかないのだ。

「なんでそんなに切り替え早いんだよ。ああ、おれも、何言ったって無理だってことはわかってるんだけどさ」

テットが陰気臭い息を吐き出した。丸まった背中が、抱えているごみ袋の中身よりもじめじめして見える。

「しかもスズなんて、入部したばっかりで廃部だろ。かわいそすぎるだろ」
「スズなら、ボラ部は大好きだからなくなるのはショックですけど、だからってうじうじ落ち込んでるわけにもいきませんよね、って前向きに言ってたよ」
「うえぇ、あいつって変なところで男前だよなあ」
「それに部がなくなったところでわたしたちがバラバラになるわけでもないし。そんなので切れる仲じゃないでしょ」
「カンナ……やべえ今おれ感動しちゃった。そうだよな、おれたちずっと友達だよな」
「保証はできない」
「デレツンやめろよぉ、まったくもう。で、ロク、おまえは廃部についてどう思ってるんだよ」

話を振られ、落ち葉を掃いていたロクが手を止める。
ロクは、ほんの少しだけ考えるような仕草をしたが、答えはわりとすぐに返ってきた。

「おれも廃部は嫌だけど、カンナと一緒で仕方ねえって考えてるよ。あとは部活が終わるまで、しっかりやることやるだけだろ」
「ロクまでそんなこと言う……」
「ほら、早く立たねえと、おまえもほうきで掃くぞ」

ロクに言われテットが渋々立ち上がる。集め終わったごみをまとめ、みんなで収集場所へと運ぶ。