彼女は白いワンピースの裾を気にしながら、上げた手に持っていた煙草を消した。
彼女の足元には赤いベビーカー。
あの子がいる。
私の気持ちが先走る。
胸を弾ませ
足をもつれさせながらも、彼女に近寄り挨拶をした。
「久しぶりね。元気だった?」
長く会わなかった友人との再会
そんな雰囲気を彼女は出しながら私に声をかける。
「はい」
私は気持ちの入らぬ返事をし
ベビーカーの子供を覗き込んだ。
子供は手足をバタバタさせて
私に笑顔を見せている。
「珍しいわね。いつも人見知りが凄いのに」
皮肉な声は気になったけど
私の目は卵の子に夢中だった。
ベビーカーの中はピンク一色
抱き上げて欲しいのか
さっきまで笑っていたのに
今は泣きそうな顔になる
表情がコロコロ変わるんだ
私達の世界では存在しない卵の子は、未知の世界の子。