迅はお母さんが来る前にと部屋に私の部屋に引っ込んだ。このときほど掃除しておいてよかったと思ったことはない。
迅は私のどきどきと裏腹に「マナカの部屋久し振りだ」なんて無邪気に本棚を漁りだし、漫画本の一冊も見つけられずしょんぼりとベッドに腰かけた。しょうがないじゃない。漫画を読む習慣がないんだもの。
間もなくお母さんが帰宅し、私はリビングダイニングで夕食にした。
お母さんにバレるリスクを減らすため、部屋の出入りを少なくしようとシャワー道具も持って脱衣所に置いておいた。
21時頃部屋に戻ると、すっかり透けている迅は私の勉強机にもたれて眠ってしまっていた。
幽霊なのに眠るんだ。勉強机でいいのかな。そりゃ、布団を敷くスペースもなければ、お母さんに見られたときの言い訳ができないけれど。
とはいえ、先に眠ってしまった迅を見てホッとした。
こんな形でも、好きな人と同じ部屋で眠るんだもの。緊張しなくて済む。
勉強机が占領されているので、ベッドで夜の分の勉強を済ませ、眠りについた。明日、迅は消えているかもしれない。
もしそうなら、一瞬でもいい夢が見られたと思おう。
怖がるな。そう自分に言い聞かせて眠りについた。